隠し砦隠し砦の三悪人』

最初から最後まで完璧に計算された、対比による人物描写が巧い傑作時代劇. 言わずと知れた黒澤明監督の娯楽活劇時代劇ですが、この映画は娯楽時代劇としての面白さよりも人物描写の巧さに思わず唸ってしまう名作だと思います. 特にラストを太平と又七の満面の笑顔で終わらせるところなど、最高の〆ではないでしょうか. この映画で個人的に特筆すべきシーンがあるとすれば、それは山名に捕らえられた秋月家臣たちが集団で反乱を起こし、凄い勢いで石段を駆け下りていくOPだと思います. というのもこの人海戦術による迫力あるシーンがあったからこそ、その後石段に「ぽつん」と残された太平と又七のコミカルさが妙に際立つんですよね. そしてこのC-3POR2-D2のコミカルさが真壁六郎太の頭のキレる格好良さが際立たせ、今度はこの真壁六郎太の頭のキレに呼応するように、雪姫の凛とした心の強さが際立つ. さらに雪姫の凛とした強さが田所兵衛の裏切りを呼び、最後に「お前が持てよ」という太平と又七の笑顔を呼ぶ. まさに最初から最後まで完璧に計算された人物描写. これは時代劇としての面白さ以上に、人物描写の巧さに唸ってしまう面白さですよ. 特に狂言回しとして描いている太平と又七のコンビは本当に面白かったです. 欲に目が眩んでは喧嘩し、命の危険が迫ると仲直り. でもまた欲に目が眩むと喧嘩するの繰り返しに加え、何度も懲りずに欲に目が眩んでは六郎太の足を引っ張っては、どうしようもなくなると六郎太を「兄貴」と言って頼るだけでなく、雪姫を姫と知らずに手を出そうとしては姫が助けた百姓娘に睨まれる始末. 本当にどこまでもダメダメな2人なのに、凄く愛嬌があるためか、この2人がコミカルに動けば動くほど真壁六郎太や雪姫の格好良さや強さが際立つんですから、やっぱり黒澤作品は素晴らしいです. またあえて敵将に金を見せて褒美がほしいと駄々をこねる作戦で関所超えをするといったような頭脳戦だけを見せるのではなく、真壁六郎太の馬上戦や田所兵衛との槍術戦をたっぷりと見せてくれるなど、頭脳戦と肉弾戦のバランスも絶妙. ロレックス 腕時計 そして太平・又七・真壁六郎太で「隠し砦の三悪人」だったところを、最後は田所兵衛・雪姫・真壁六郎太で「三悪人」のように笑みを浮かべさせるところも、その後に欲深かった太平と又七がわずかな金子でも「お前が持てよ」と互いに譲り合い笑顔で石段を下っていくところも、本当に演出が巧いこと. やはり黒澤作品は50年以上経っても面白いですよね. ちなみに野村克也南海ホークス監督は頑固一徹で起用に手を焼いた江夏豊江本孟紀門田博光の3選手を「南海の三悪人」と名付けてましたが、こちらは映画化される予定はないのでしょうか? 深夜らじお@の映画館 は是非「南海の三悪人」が映画化されれば見に行きたいです.