声優たちの美声轟く"戦国無双 声優奥義

声優が叫ぶ! ファンも叫ぶ! 2011年10月16日、パシフィコ横浜(神奈川)にて、コーエーテクモゲームスのアクションゲーム『 戦国無双 』シリーズのイベント"戦国無双 声優奥義 2011 秋"が開催された. 『 戦国無双 』シリーズ2回目のイベントとなる今回は、昼夜2回公演での実施. 草尾毅(真田幸村役)、小杉十郎太(織田信長役)、緑川光(明智光秀役)、進藤尚美(森蘭丸役、夜の部のみ)、竹本英史(石田三成役)、神谷浩史(浅井長政役)、山田真一(島左近役、昼の部のみ)、高塚正也(直江兼続役)、置鮎龍太郎(長宗我部元親役)、藤本たかひろ(福島正則役)という錚々たる面々が、美声を披露した. 今回は、昼公演の模様を演目ごとにお届けしよう. (撮影/大山雅夫) ドラマ1 声優奥義 2011 秋 特別編"本能寺の変" キャスト紹介の後、最初の演目である"声優奥義 2011 秋 特別編「本能寺の変」"が始まった. これは、明智光秀織田信長を討った"本能寺の変"を描いたボイスドラマ. 出演は、小杉十郎太(織田信長役)と緑川光(明智光秀役)のほか、神谷浩史(浅井長政役)、置鮎龍太郎(長宗我部元親役)ら計4名. 信長の冷酷さについて行けなくなった光秀が、元親の言葉により、主である信長を討つことを決意するという内容で、ファンは声優たちの熱演を食い入るように見つめていた. バラエティーコーナー1 三成&長政の"みゅーじっく演武" このコーナーの司会は、神谷浩史竹本英史に、総合司会の阪口大助を加えた3人. ゲストに小杉十郎太緑川光藤本たかひろを招き、キャラクターソング収録時の感想などについてトークを行った. 藤本は、福島正則のキャラクターソング『 男・一番槍 』を発売するという話を聞いて「コーエーテクモさんは本気かな? と思った(笑)」そうだが、「仮歌を聞いて、楽しい曲だと感じた」とのこと. また、織田信長明智光秀のデュエット曲『 焔 〜武火燃ゆる〜 』について緑川は、小杉の歌が非常に上手なので、プレッシャーを感じていたことを明かした. トークの後にはそれぞれの歌が披露され、会場を大いに盛り上げていた. バラエティーコーナー2 "あなたならどっちでショー" 緑川光竹本英史神谷浩史、山田真一、高塚正也の5人によるミニドラマの振りを受けてのつぎのコーナーは、"あなたならどっちでショー". これは、どちらかというと本能のままに生きている"敵は本能にあり"派と、どちらかというと理性に従って生きている"敵は理性にあり"派にわかれてディベートを行い、最終的に人数が多いほうが勝ちという内容. 「世の男性はぽっちゃりが好き! 」(山田)や「聞けるなら女性にメアドをふつうに聞きたい! 」(神谷)など爆弾発言も飛び出しつつ、最終的には本能派2人対理性派7人で、理性派の勝利となった. 告知コーナー 本コーナーでは、阪口、高塚、藤本の3人が、現在発売されている『 戦国無双3 Empires 』の紹介を行った. 同作をやり込んだという高塚は、「織田家でプレイしたら、斎藤家や徳川家などに袋叩きにされた」というエピソードを披露. 先日発表されたばかりの『 無双OROCHI2 』のプロモーションビデオが上映されるなど、ファンにはうれしいサプライズもあった. ライヴコーナー 続いて行われたライヴコーナーでは、戦国武将たちの背景を描いたキャラクターソングが披露された. ファンが立ち上がってペンライトを振るなど、会場は熱気に包まれていた. 演目は以下の通り. ・『 狭霧之彼方 』/石田三成(竹本英史) feat. 島左近(山田真一) ・『 侍魂 〜KIZUNA〜 』/島左近(山田真一) feat. 石田三成(竹本英史) ・『 青冥之鷹 』/真田幸村(草尾毅) ・『 奏 〜抗い候〜 』/長宗我部元親(置鮎龍太郎) ドラマ2 声優奥義 2011 秋 特別編"関ヶ原の戦い" ボイスドラマの第2弾は、関ヶ原の戦いがモチーフ. 出演者は、草尾毅(真田幸村役)、竹本英史(石田三成役)、山田真一(島左近役)、高塚正也(直江兼続役)、藤本たかひろ(福島正則役)の5人. 幸村、三成、兼続という豊臣方3人の武将の友情や、三成を支える左近、三成と袂を分かった正則など、関ヶ原の戦いの中心人物である石田三成を中心に物語が展開した. 声だけですべてを表現しきる声優たちの妙技に、ファンは大きな拍手を送っていた. アンコールライヴ ボイスドラマ終了後、キャスト陣が再び勢ぞろい. 公演の感想やファンへの感謝を述べたのち、ステージはいったん幕を下ろした. しかし、ファンの熱い拍手を受けて再び幕が上がり、草尾、竹本、高塚の3人が登場! しかも、それぞれが演じる武将の衣装を着ているというサプライズもあり、ボルテージは頂点に. 3人もスタンドマイクを使って、ロッカー顔負けのパフォーマンスを行うなどで声援に答え、会場はこの日最高の盛り上がりを見せていた. (撮影/大山雅夫). 努力の積み重ねがプロへの道 2011年5月29日、ヒューマンアカデミー東京校にて、総合学園ヒューマンアカデミーが主催する、ゲームのプロによるセミナー"ゲームサーキットフォーラム"がスタートし、スクウェア・エニックスの開発部でサウンドグループ テクニカルディレクター/サウンドプログラマを務める土田善紀氏が講演を行った. 同校の在校生などのゲーム業界志望者が対象ということもあり、講演は専門用語などをあまり使わない平易な言葉で行われた. まずは自己紹介代わりに、土田氏が自身の過去を振り返るところからスタート. 小学生でファミコンに、中学生で光栄(現コーエーテクモゲームス)の『 三國志 』にハマり、やがて同人ゲーム制作も行うようになって、学校の勉強はしだいにおざなりに. そんな若き日の土田氏にも当然"就職か進学か"という選択がやってくる. 大学受験をするも全滅、予備校を3日で辞め、プログラム力を活かして就職活動へと転じたというのが、普通の学生とは少々異なる点だ. 当時はバブル期全盛で、「プログラムができれば会社に入れた」と土田氏. しかし、ゲーム業界の待遇は悪かったため、そちらには行かずにメインフレーム・制御系のプログラマになったのだという. その後もプログラムの腕を奮い、CAD・DTPソフトの開発なども経てフリーランスへ転身. 順調そうに見えるキャリアだが、バブルの終焉とともに一転、新聞配達員として働くことになる. そして「これ(新聞配達員)もおもしろいが、もともと何をやりたかったんだろうか? 」と、プログラムの勉強がゲームから始まったことを思い出し、ついにゲームのプログラマーとなることを決心. 一社を挟んだのちスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社することになる. プレイステーション/ドリームキャスト世代では、『 ファイナルファンタジータクティクス 』や『 ベイグラントストーリー 』に参加し、キャラクターのアニメーションやAI周りなど、特定の分野を任されていたとのこと. 『 ベイグラントストーリー 』では、初めての3Dゲームを手掛けることになり、CAD・DTPのプログラム経験で勉強していたとはいえ、高校の教科書を開き直して勉強し、高校時代の先生にわからない部分を聞くこともあったとか. この、課題に対してくらいつくという部分は、後の結論にも繋がってくる部分だ. その後もキャリアを積み、『 ファイナルファンタジーXII 』では描画系プログラムの責任者になり、幅広い部分の設計やツールの開発などに携わる. 続くプレイステーション3/Xbox 360世代ではゲームエンジンの設計・構築にはじまり、現在のサウンド部分のプログラムへと担当分野が移っていく. それまでの経歴にはなかった分野だが、「ゲームで音が鳴らないことはない. 何をやっても音は鳴る」として、それまでの経験を活かしながらツールの開発などを行っているという. 一方で、ここまで手掛けてきたものはある分野のパーツであって「じつはゲームを創っていない」との見方も提示. 新人のプログラマーであれば、ある処理をするための関数を作り続けることから、デザイナーであれば木の葉っぱや内装オブジェクトの家具のみをモデリングし続けるということから始まることもあるらしい. 大手メーカーの大規模開発ではこれが当たり前であるとして、学生がイメージするような"ゲーム作り"は、ソーシャルゲーム系や小さなデベロッパーの仕事のほうがある種近いとも言えるので、進路を考える際の参考にしてほしいと語っていた. ここで、入ってみてどうだったのか、一般的なマイナスイメージとプラスイメージを提示し「すべてその通り」と断言. 土田氏は、マイナス面を上回る楽しさがあり、「結論としては超絶楽しい. ほかの仕事より断然おもしろい」、「仕事が終わったあとで趣味をやるより、仕事自体が趣味のほうが絶対楽しい」と熱く語る. では、ゲーム業界に入るにはどうすればいいのか? 業界志望者がいちばん気になる本題だ. スクウェア・エニックスでは大学中退、大卒、専門卒が混ざり、経歴や年齢は関係なく働いているとする. 現在の新卒採用は大学卒に限定されているものの、キャリア募集という手もあるとしたうえで、リーダーレベルでの考えとしては、単に学歴や地頭がいい人だけでなく「ゲームを開発したい! 」という熱意ある人とも働きたいと考えているそう. しかし、ここで衝撃なグラフが提示される. 真っ白な棒に見えるのだが、じつはほんのちょっとだけある赤い部分が合格者. そう、非常に狭き門なのだ. 開発現場では人が足りないのに何故なのか? これは会社が求める能力と応募者が持つそれとのマッチングがうまくいっていないからだとする. 結論は「あなたに能力がありさえすれば入れる! 」というシンプルなもの. そして「特定の会社・分野だけにこだわればさらに難しくなる」と付け加える. ここで土田氏の経歴を振り返ってみてほしい. 別の業界でもスキルは積めるのだ. 大手や難しいところばかり狙わずに、まずは始めてしまうというやり方もある. ゲーム業界でなくとも一旦プロのプログラマーになってしまってプログラミング技術を磨くのでもいいし、イラストレーターとしてデザインをこなしていくのでもいい. 採用者の目に止まるのであれば、同人ゲームという手もあると土田氏は語る. 土田氏は、プロに求められる能力を身につけるには「圧倒的な量をこなす」ことだとして、マルコム・グラッドウェルの"1万時間の法則"も引用しつつ、とにかく量をこなして壁にぶち当たることで、はじめて効果的な学習ができると述べる. 努力こそがプロとして負けない技術を鍛えあげるのだ. 唯一必要な才能は、その積み重ねの努力を好きになってしまうことのみ. プログラマーなら授業で教えてもらうのを待つな、シナリオライターならあらゆるものを毎日読み、とにかく書くべきだ、専門学校の授業は基本なのですべて取りに行け、ネットはフル活用してとにかく作品を生産し、どんどん外と交流して世界を肌で感じるべきだ... と、受講者に語りかけた. だが、そうしてプロのゲーム開発者になったとしても、失うものもある. 遊ぶ時間や家族といる時間はそれほどないかもしれない. プロの世界は「走り続けている連中ばかり」(土田氏)で、つねに変化に対応し、腕を磨き続けなければ、変化し続ける世界に置いて行かれてしまうからだ. 最後に土田氏は「そこまで? と思う人は(ゲーム業界を目指すのを)やめておいた方がいいです. でも、それでもやりたいという人はがんばってください. みなさんが来る日を待っています」と、厳しい言葉を交えながら激励した. ゲーム業界を志望する若い受講者にとって、この言葉はどのように聞こえただろうか? 願わくば明日から続く努力の日々を決意するものであってもらいたい. なお"ゲームサーキットフォーラム"は、本講演を皮切りに、全国各地のヒューマンアカデミーで開催予定. 特設ページで一般参加の申し込みも受け付けているので、気になる人はチェックしてみてほしい.